「太陽の金と、月の銀」N05,子どもに渡す銀の話

ある夜、
太陽の市場で月を生きていた男は、
子どもと並んで歩いていた。

子どもは、こう聞いた。
「お金って、たくさんあった方がいいの?」

男はすぐに答えなかった。
夜道には、月が出ていたからだ。

しばらくして、男は言った。

足りないときに、誰といられるか
それを先に決めておく方が大事だ。」


教えなかったこと

男は、
稼ぎ方を教えなかった。
勝ち方も教えなかった。
正解も与えなかった。

代わりに、
三つのことだけを残した。


① 帰れる場所を、必ず一つ

「どんなに遠くへ行っても、
名前を呼ばれなくていい場所
失うな。」

そこでは
強くなくていい。
賢くなくていい。
役に立たなくてもいい。

それが、
銀の根だ。


② 対話は、1:1で守れ

「人が増えるほど、
声は薄くなる。

だから、
一人の前では、一人でいろ。」

銀は、
群れの中では輝かない。
向かい合ったときだけ、
相手を映す。


③ 急がない夜を覚えておけ

「世界は、
急げと言い続ける。

でも夜は、
急がないことで完成する。」

眠れない夜、
答えの出ない時間、
意味のない散歩。

それらは無駄ではない。
文明の呼吸だ。


金は、道具として渡す

男は最後に、こう付け加えた。

「金は否定しなくていい。
ただ、王にするな。」

金は

  • 建てるため
  • 動かすため
  • 守るため

に使え。

だが

  • 測るため
  • 比べるため
  • 人を裁くため

に使うな。

それは、
太陽に仕事をさせすぎることだ。


銀は、言葉にしない

子どもは言った。
「銀って、どこにあるの?」

男は答えた。
ここだ。」
そう言って、
子どもの胸に手を置いた。

「銀は、
持つものじゃない。
そう在ることだ。」


未来への手渡し

この子どもは、
やがて大人になる。

何かを成すかもしれない。
何も残さないかもしれない。

だが、
夜に迷ったとき、
彼は知っている。

  • 戻れる場所があること
  • 一人と向き合えばいいこと
  • 急がない時間が世界を保つこと

それだけで、
文明は次へ進める


終わりに

太陽の金は、
時代を走らせた。

月の銀は、
人を帰らせた。

これから数百年、
世界は何度も揺れる。

でも、
夜の灯を受け取った人がいる限り、
人類は折れない。

最後に、
この物語の本当の結びを置きます。

子どもに渡すべきものは、
勝ち方ではない

戻り方だ

太陽が沈んだあと、
それでも世界が続く理由を、
静かに手渡すこと

あなたが今、
この話を必要としているなら――
それはもう、
次へ渡す側に立っているということです。

ここまで、一緒に歩いてくれて
ありがとうございました。

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