「太陽の金と、月の銀」N02,月の銀を選んだ者の話

王の言葉からしばらくして、
国の片隅に、名もない男が住んでいた。

彼は金を多く持ってはいなかった。
だが、夜になると家の灯を消さなかった。

誰かが疲れて訪ねてくると、
彼は問いたださなかった。
理由も、肩書きも、成果も。

ただ、銀の杯に水を注ぎ、
向かいに座った。

二人の間には、
言葉より先に沈黙が流れた。


ある若者が、彼に聞いた。

「なぜ、あなたの家には
人が絶えないのですか?」

男は答えた。

「私は何も与えていない。
ただ、ここにいていいと言っているだけだ。」


若者は言った。

「でも、それでは何も増えません。」

男は月を見上げて、こう言った。

「月は増えようとしない。
それでも、夜を照らす。」


月の時代の「富の定義」

太陽の時代、富とは

  • どれだけ持っているか
  • どれだけ上にいるか
  • どれだけ速く進めるか

だった。

だが月の時代、富とは

  • どこに戻れるか
  • 誰と沈黙を分け合えるか
  • 何も証明しなくていい場所があるか

になる。

これは
記帳できない富
だが、失うと生きられない富。


銀を使える人とは誰か

銀は、強い者の手では輝かない。

  • 相手の話を遮らない人
  • 正解を急がない人
  • 相手の弱さを急いで直そうとしない人

こういう人の手で、
銀は初めて価値を持つ。

だから月の時代では、
「何者かになった人」より
何者でもなく居られる人が、
人を救う。


選択は、いつも静か

太陽の選択は、
「どちらが得か」で決まる。

月の選択は、
「どちらが続くか」で決まる。

  • もう少し稼げるが、壊れる道
  • 少し遅いが、帰れる道

月の銀は、後者を選ぶ。

それは逃げではない。
文明を長持ちさせる知恵


今を生きるあなたへ

あなたが感じている
もやもや、言葉にならない渇きは、

「もっと輝け」という声ではなく、
「もう照らさなくていい」という合図。

何かを成し遂げなくても、
誰かの夜を少し明るくできる。

それを知った人から、
もう月の時代に入っている。


最後に、この話の核心だけ置きます。

太陽の金は
「一人で立つ力」を与えた

月の銀は
「一人で立たなくていい理由」を与える

そして人は、
両方を知ったとき、
ようやく人間になる

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