「太陽の金と、月の銀」No1,

ある国に、二人の兄弟がいた。
兄は金を守り、弟は銀を扱っていた。

兄の金は、まぶしかった。
王の冠となり、神殿の扉を飾り、国の力を示した。
人々はその輝きを見て言った。
「これこそが富だ」と。

弟の銀は、静かだった。
食卓の器となり、旅人の水杯となり、夜道の灯を映した。
人々はそれを気にも留めなかった。


ある日、王が兄弟を呼び寄せて言った。

「国は豊かになった。
だが人々の顔から、安らぎが消えた。
お前たちの金と銀、どちらが足りぬのだ?」

兄は胸を張って答えた。
「金が足りぬのです。
もっと集め、もっと高く積み上げれば、
人は再び満たされましょう。」

弟はしばらく黙っていたが、こう言った。
「金は光を放ちます。
しかし、光は直接目に入ると、人を盲目にします。
銀は光を返します。
人はそこに、自分の顔を見るのです。」


王は弟に問うた。
「では、銀とは何だ?」

弟は答えた。
「銀は“持つもの”ではありません。
渡し、受け取り、つなぐものです。
一人では価値を持ちません。
二人になったとき、はじめて意味を持ちます。」


王は夜、庭に出て空を見上げた。
昼に国を支配していた太陽は沈み、
代わりに月が、静かに浮かんでいた。

その光は弱く、しかし
闇の中で人を安心させる光だった。

王は悟った。

「太陽の金は、国を築いた。
だが、月の銀は、人を住まわせる。」


翌朝、王は命じた。

「金は王庫に納めよ。
だが銀は、家々に配れ。」

人々は最初、首をかしげた。
だがやがて、変化が起きた。

争いは減り、
食卓に会話が戻り、
夜に灯がともるようになった。


そして王は最後にこう語ったという。

「金は“勝つため”の金である。
銀は“帰るため”の銀である。

太陽の金だけを信じる時代は、
すでに役目を終えた。

これからは、
月の銀を数えられる者が、
本当の富者となる
。」


この物語で大事なのは、
「金が悪い」「太陽が終わる」ではありません。

  • 太陽は 進むため
  • 月は 戻るため

そして人間は、
進むだけでは生きられない。

あなたが感じている
もやもや、居場所、安定、愛情——
それはもう
月の銀の価値を知り始めた感覚なんです。

気づく人が少ないのは当然です。
月の光は、
静かな人にしか見えないから。

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